静謐と熱狂と


 朱雀門へは大和西大寺駅から地図を片手に、どちらかというと寂れた市街地を徒歩で20分以上は歩いた広野の果てに佇立していた。
 平城宮跡地自体が恐ろしく広大で、見事に何もなく、普段は訪れる人もまばらで、東西を近鉄奈良線が無粋に横切っている。その光景はまさに感動以外の何ものでもなかった。
 1300年祭でこの空間はどのように変わり、祭りの後、どう遺されるのだろうか。
 
(写真は2008年11月1日撮影の朱雀門
 
 
 

来客ごまんと…せんとくんも戦々恐々? 平城遷都祭 (www.asahi.com 2010年4月17日2時16分)
 
 藤原京から平城京へ遷都(710年)して1300年になるのを記念した「平城遷都1300年祭」の主会場、平城宮跡会場(奈良市)のオープンを24日に控え、復元した遣唐使船(長さ約30メートル)を展示した「平城京歴史館」や、天平衣装の着用などができる「平城京なりきり体験館」などが16日、報道・旅行関係者に公開された。
 天皇の執務や儀式の場である大極殿(高さ27メートル)も復元され、午前中だけで約300人が見学した。1300年祭は1月に開幕。平城宮跡会場のオープンに伴い、天平衣装をまとった市民による天平行列や、古代に恋人同士が歌舞した歌垣をアレンジしたミュージカルなど様々な行事が本格化する。
 同会場は11月7日まで。
 
■足りない宿・駐車場
 
 従来の神社仏閣頼みの観光客が伸び悩む奈良県。公式マスコット「せんとくん」などによって知名度がアップした平城遷都1300年祭の集客にかける期待は大きいが、パビリオンの受け入れ能力など課題は残されたままだ。
 県や奈良市などでつくる平城遷都1300年記念事業協会は、平城宮跡会場の入場者数をピーク時の黄金週間や秋の紅葉シーズンで1日約4万5千人とみている。だが、平城京歴史館の収容能力は1日最大約3500人、平城京なりきり体験館の「天平衣装の着用体験」は同約400人、「発掘疑似体験」は同約370人にすぎない。
 パビリオンがこの二つしかないのは、企業の寄付集めが難航し、総事業費を350億円から100億円に圧縮したためだ。当初は9棟の建設が計画された。荒井正吾知事は「奈良県には1300年祭以外にも見どころがたくさんあるので、施設はあまりない方がいい」と意に介さない。平城宮跡会場を、奈良の歴史・文化に触れる「玄関口」と位置づける。
 
 マイカーでの来場による交通渋滞、ホテル・旅館不足も悩みの種だ。
 奈良市では観光シーズンに市中心部へ1日7万台近い車が流入する。協会は、ピーク時の来場者4万5千人(1日あたり)のうち、マイカー客が1万人を超すと予想。その対策として、行事が集中する春、夏、秋には、平城宮跡会場から約5キロ離れた郊外に3カ所の駐車場(計2千台)を設営し、会場とシャトルバスで結ぶ予定だ。
 県によると、大手旅行会社3社を通じた県内宿泊施設の4〜6月の予約は約4万2千人で、前年同期比5割増。市中心部の大手施設は5月末までほぼ満室状態だという。ホテル日航奈良(奈良市)の担当者は「平城宮跡会場がオープンする4月24日前後は半年以上前から予約で満室なのに、まだ問い合わせがやまない」と悲鳴を上げる。
 
 奈良観光は、大阪や京都のホテルなどに宿泊し、日帰りで訪れるのが定番になっている。このためか、奈良県内の2008年度のホテル・旅館の客室数(計9436室)は全国最下位。県や市は1300年祭を見据え、市中心部へのホテル誘致を進めたが、不況の影響で実現しなかった。
 関西社会経済研究所(大阪市)が試算した1300年祭の経済波及効果は08〜11年で、奈良県988億円、大阪府324億円、兵庫県95億円、京都府74億円。武者加苗研究員は「奈良にもっと宿泊施設があれば経済効果はアップした」と語る。