クロード・レヴィ=ストロース死去

「悲しき熱帯」レビストロース氏死去 「構造主義の父」 (www.asahi.com 2009年11月4日1時35分)
 
 20世紀を代表する思想家で文化人類学者のクロード・レビストロース氏が死去したと、AFP通信が3日、出版社の情報として伝えた。100歳。今月28日には101歳の誕生日を迎えるはずだった。
 
 同氏はパリ在住。メディアにはほとんど出ないが、健康で、旅行もしていたという。今年に入って一時健康を害したものの、頭脳の明敏さは相変わらずだったという。
 昨年11月に同氏が100歳の誕生日を迎えた際には、地元フランスのサルコジ大統領が訪問して敬意を表した。大統領府によると、現代社会の今後についてサルコジ大統領と意見を交わしたという。様々な記念行事も催された。
 
 レビストロース氏は構造主義の父といわれ、55年に発表した「悲しき熱帯」が人文社会科学全般に大きな影響を与えた。日本文化の愛好者としても知られる。

 2006年4月に、未訳だった大著『神話論理』第1巻「生のものと火を通したもの」が刊行され、東京堂書店2階の人文科学書コーナーで、そのずっしりと重い手応えのある本のページをどきどきしながら捲ったのを覚えている。サルトルボーヴォワールメルロ=ポンティら絢爛たる同時代人らとともに、20世紀前半の世界の「知」を牽引した巨人クロード・レヴィ=ストロース。神話にはなぜ、<構造>が純粋に現れるのだろうか、という橋爪大三郎(『はじめての構造主義』)の分析を思い出す。
 
 58歳にしてエイズで死んだミシェル・フーコー、謎に満ちた自動車事故で世を去ったロラン・バルト、妻を絞殺し、錯乱の中に死んだルイ・アルチュセール肺気腫による苦しみから逃れるように投身自殺したジル・ドゥルーズ…。その絢爛たる知の輝きに比して、異様なまでに刹那的な死を遂げたかに見えてしまう現代思想のかつての「旗手」たちの中で、100歳を超える天寿を全うしたクロード・レヴィ=ストロースは、21世紀においてこそ復権し、何度でも再評価されうる思想家のひとりなのかもしれない。
 

生のものと火を通したもの (神話論理 1)

生のものと火を通したもの (神話論理 1)