梅原猛 『梅原猛の授業 仏教』

 釈迦は天国のことを説かない。人生はこういうものだからと言って静かに死んでいく。(ヘルマン・オルデンベルグ
 
 
 …日本古来の神道では、えらい人を神に祀るということはありえないんです。神に祀る人はみな、世の中を恨んで死んだ人。高い位につきながら流されたり殺されたりして世の中を恨んでいる人が神さまに祀られている。それは彼らが怨霊だからです。世の中を恨んでたたりをなすから、その魂を鎮めるために祀られているんです。
 やはり明治時代にできた平安神宮には桓武天皇が祀られている。桓武天皇は京都へ都を移した大恩人です。だけど桓武天皇が祀られたことは、それ以前にはなかったんです。桓武天皇の弟に早良皇太子という人がいて、皇位継承のトラブルで桓武天皇に殺された。たぶん無実であったと思いますが、桓武天皇は祀られずに、殺された早良皇太子が祀られた。それが上下の御霊神社です。(p.251)