宮台真司 『日本の難点』

第1章  人間関係はどうなるのか ――コミュニケーション論・メディア論
第2章  教育をどうするのか ――若者論・教育論
第3章  「幸福」とは、どういうことなのか ――幸福論
第4章  アメリカはどうなっているのか ――米国論
第5章  日本をどうするのか ――日本論

 
 筆者によると、9.11以降、政治を評価する価値の物差し(立場)は「多文化主義を徹底的に否定する」「普遍的といえるものは永久にあり得ない」という2つの焦点に収束しつつあるという。そして、こうした「普遍主義の理論的不可能性と実践的不可避性」のギャップをどう実践的=理論的に橋渡しするかが、現代政治哲学の最前線の課題なのだと指摘する。
 
 どんな社会であれ、社会とは恣意的なものであり、その意味で「底が抜けて」いる。しかし、従来はそうした恣意性を乗り越える(やり過ごす)働きを、多くの社会が内蔵していた。それが「壊れてしまった」ということ、すなわち誰もが「社会の『底が抜けて』いることに気づいてしまう」ことが、「ポストモダン」という概念の肝なのだ。
 
 相対主義の時代が終わり、なおかつ対抗軸として絶対的なものへのコミットメントを推奨する立場があり得た時代も終わった今日、「境界線の恣意性」(20世紀的人文知)から「コミットメントの恣意性」(21世紀的人文知)への転回を「いかに肯定的に」実践するか。本書では、その最先端の知的枠組みについて、人間関係論(コミュニケーション論、メディア論)から若者論・教育論、幸福論、さらに米国論を経て日本論(これからの日本をどうするのか)までを俯瞰する。