イスラエル 脅威の「連鎖」がつなぐもの

イスラエル新政権組閣、右派のネタニヤフ氏に要請へ  (www.asahi.com 2009年2月20日23時12分)
 
 イスラエルのペレス大統領は20日、右派リクードのネタニヤフ党首に次期政権の組閣を要請した。総選挙(国会定数120)で右派が過半数を獲得した結果を踏まえた決断だ。ネタニヤフ氏は中道左派との連立を目指す方針だが、カディマ労働党は連立に加わらない姿勢を示している。右派だけによる政権が誕生すれば、中東和平に向けた動きが停滞することは避けられない。
 
 ネタニヤフ氏はペレス大統領との共同会見で、イランによる核開発や世界的な不況がイスラエル国民の大きな脅威になっていると強調。「イスラエルは団結しなければならない」と訴え、カディマ労働党に「挙国一致政府」に加わるよう呼びかけた。
 大統領はこの日、カディマのリブニ党首と会談。政権安定のため連立に加わるよう促したとみられる。カディマ(28議席)が第1党の座を守ったものの、左派を含め他党の推薦を取りつけることができず、連立を組むことが困難な状況になっていた。
 カディマリクードと連立を組む場合、リブニ氏が首相になるか、ネタニヤフ氏と2年ずつ交代で首相を務めることを求めていたが、リクードから拒否されていた。
 リブニ氏は19日、右派を軸とした連立への参加を拒否する姿勢を示した。労働党などの左派も同様の方針だ。
 
 一方、ネタニヤフ氏は第3党に躍進した極右政党「イスラエル我が家」のリーバーマン党首ら、計65議席を獲得した右派勢力の支持を取り付け、首相候補レースで優位に立っていた。だが、リーバーマン氏はアラブ系住民の排斥を唱える一方で、世俗的政策を掲げ、同じ右派のユダヤ教政党シャスと対立。ネタニヤフ氏による組閣を支持する条件として、カディマとの連立を求めていたとされる。カディマが連立に参加しない場合、「我が家」がどう対応するか、不透明な情勢だ。
 ネタニヤフ氏は、右派だけで連立を組めば中東和平を推進するオバマ米政権や欧州との摩擦が生じるため、カディマ労働党との連立を模索している。また、右派は躍進したとはいえ半数を5議席しか上回っておらず、不安定な政権運営を強いられかねない。今後も、閣僚の重要ポストを割り振る案を提示しつつ、中道左派に連立参加を呼びかけるものとみられる。
 だが失敗すれば、パレスチナとの和平交渉で強硬路線をとるユダヤ教諸政党を含め右派だけの政権が誕生することになり、中東和平交渉が停滞するのは必至だ。
 
 ネタニヤフ氏は、6週間以内に組閣し、国会で承認を得なければならない。組閣できなかった場合、大統領は別の党首に組閣を要請することになる。