グレン・グールド / ヒンデミット ピアノ・ソナタ<全3曲>

ドイツの偉大な指揮者・フルトヴェングラーに、あるいはE・クライバーに愛された音楽家。作品数は「生産力極大」、疑似調性でシンメトリー、書法密度は「金銭次第」でその後の影響は「取るに足らない」……
 
ヒンデミット――彼の時代は再来するだろうか、とグールドは言う。ヒンデミットが生きた1930年代、「進歩派」にはシェーンベルクがいた。「新古典主義者」にはストラヴィンスキーが。もちろん、そのほかに中道路線の選択としてバルトーク、ベルク、プロコフィエフショスタコーヴィッチ、メシアンウェーベルンらが…それに年をとってしまっていてほとんどどのカテゴリーにもはまらない伝説的人物リヒャルト・シュトラウス……。だが、グールドにとって、パウルヒンデミットはそのいずれにも当てはまらない「何か」だと言う。ドイツ的プラグマティストだろうか? ドイツ的理想主義者? ヒンデミットはすべての点でウェーベルンではない。ヒンデミットの聴衆は、一貫して一つの知的な「休息」といったものを用意してくれるであろうという、かなり現実的な期待をもって彼に惹かれていたのだ――そう語るグールドのヒンデミットは、「時代の転換期にあって様式的なジレンマを体現した」音楽家の細部を、彼でなければ再現できないタッチで我々の眼前に提示する。