海水の奥座敷

有馬温泉、なぜしょっぱい? 京大など研究 (www.asahi.com 2013年05月28日09時30分)
 
 有馬温泉(神戸市)のような塩辛い温泉は、海底から地下深くに運ばれた海水が元になっているとみられることが、京都大や鹿児島大などの研究でわかった。陸の下に沈み込む海のプレートが海水を運んでいる証拠を見つけた。米科学アカデミー紀要電子版で近く発表される。
 
 有馬温泉和歌山県の白浜温泉、湯の峰温泉川湯温泉、長野県の鹿塩温泉などは塩分濃度が海水の1〜2倍程度と高く、火山が近くにないのにお湯が熱い。こうしたタイプは「有馬型温泉」と呼ばれ、太古に地下に閉じ込められた海水が元になっていると説明されてきた。
 
 京都大の川本竜彦助教(実験マグマ学)らは、1991年に噴火したフィリピンのピナトゥボ火山で、地下30キロほどから地表に出てきたとみられる岩石を採取して観察。0・03ミリ程度の液体の粒がたくさん含まれることを見つけた。液体の塩分濃度は海水の1・4倍程度。ほかの成分も詳しく分析し、海水が濃縮された可能性が高いことを突きとめた。これは、海のプレートが、隙間に入った海水を地下深くまで運んでいる証拠となる。
 
 こうして運ばれた海水が深部で高温になり、断層などの割れ目を伝って地表に出てきていると考えると、有馬型温泉の成り立ちをうまく説明できるという。
 
 川本さんは、「これまでプレートに含まれる水は真水だと考えられていた。だが、有馬型温泉以外でも海水と考えた方が説明のつく現象が多い」と話す。