「通信の秘密」を保存する

ログ保存の義務化検討 サイバー犯罪捜査へ政府戦略 (www.asahi.com 2013年05月21日16時11分)
 
 安倍政権は21日の情報セキュリティ政策会議(議長=菅義偉官房長官)で、サイバー攻撃に対応するための「サイバーセキュリティ戦略」の原案をまとめ、接続業者への通信履歴(ログ)の保存義務づけを検討すると明記した。憲法が保障する「通信の秘密」との関係で議論を呼びそうだ。
 
 ログの保存に関し、現在は捜査機関が捜査対象者を特定して最大60日間まで接続業者に要請でき、裁判所の令状があれば押収することも可能だ。ただ、不特定の接続業者に普段からログ保存を義務付ける法律はないのが現状だ。
 
 原案では、サイバー犯罪が高度化するなかで「国の治安や安全保障・危機管理に影響を及ぼしかねないサイバー攻撃への対処態勢の強化が必要」と判断。「事業者におけるログの保存のあり方を検討する」との方針を盛り込んだ。
 
 ただ、ログの保存義務付けには個人情報保護などの観点からの議論も避けられないため、検討にあたって「通信の秘密との関係」「事業者の負担」「海外でのログの保存期間」「国民の多様な意見」を勘案するとした。
 
 政府は原案について国民から意見を募り、6月に戦略を決定する方針で、警察庁などで法整備も含めて検討することが想定される。この日の会合で、安倍晋三首相は「内閣一丸となって世界最高水準のIT国家にふさわしい安全なサイバー空間の構築を目指す」と強調。古屋圭司国家公安委員長はログ保存義務づけについて「実現に向けて着実に取り組んでいきたい」と語った。
 
■サイバーセキュリティ戦略案(骨子)
 
・通信履歴保存は「通信の秘密」や国民の意見を勘案して検討。悪質サイト利用に注意喚起の仕組みを構築
 
・サイバー空間における自衛隊の能力・態勢の強化
 
・政府機関に準じたセキュリティー対策を求める「重要インフラ事業者」に防衛産業の追加を検討
 
・セキュリティー産業の国際競争力強化