富士山、世界文化遺産登録へ

富士山、世界文化遺産登録へ 鎌倉は「不登録」 (www.asahi.com 2013年4月30日23時56分)
 
 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に、「富士山」(山梨、静岡両県)が登録される見通しとなった。「武家の古都・鎌倉」(神奈川県)は「不登録」とされた。世界遺産委員会の諮問機関が勧告した。6月16日からカンボジアプノンペンで開かれる世界遺産委員会で最終的に決まる。
 
 フランス・パリの世界遺産センターが30日(現地時間)、文化遺産候補を審査する諮問機関・国際記念物遺跡会議(イコモス)の勧告内容を日本政府に伝えた。イコモスは遺産候補について「登録」「情報照会」「登録延期」「不登録」の4段階で評価する。
 
 「富士山」はかつて、地形や生態系で評価される自然遺産での登録を目指していた。しかしゴミ問題の影響もあって国内で候補地を選ぶ段階で「落選」。古くから信仰の対象だったことや、葛飾北斎の浮世絵など日本独特の芸術文化を育んだとして、文化遺産に切り替えて、登録を狙った。
 
 山頂の信仰遺跡群や登山道のほか、三保松原など25の資産で構成し、時代を超えて文化の諸相と深く関連する「世界的な『名山』としての景観」をもつとされた。またイコモスからの要請で、登録名称を当初の「富士山」から「富士山と信仰・芸術の関連遺産群」へ変更した。イコモスは三保松原を除外することも要請。この要請は拒否したが、イコモスは、三保松原を除いての登録が適当と勧告した。
 
 「鎌倉」は、既に文化遺産に登録されている法隆寺や姫路城と一緒に1992年、国内の候補地リストの「暫定一覧表」に最も早く掲載された物件の一つ。
 
 鶴岡八幡宮円覚寺など21の社寺・史跡による10資産で構成。ユネスコへの推薦では、戦士階級を出自とする武家が、貴族支配から武家支配へという変革をもたらした地であり、中国とも交流して武家の文化を生み出したと強調。三方を山に囲まれ、一方が海に開く場所で、崖地を造成し山稜部と一体となったまれに見る政権所在地としても顕著な普遍的価値があるとされたが、イコモスは登録はふさわしくないとする「不登録」を勧告した。
 
 現在の世界遺産の総数は962件。そのうち文化遺産は745件だ。日本では「法隆寺地域の仏教建造物」など文化遺産が12件、「屋久島」など自然遺産が4件登録されている。