米国とロシアの間

死亡の容疑者、半年間ロシアで何を テロまでの行動焦点 (www.asahi.com 2013年04月22日21時09分)
 
 ボストン・マラソンを襲ったテロ事件は、死亡したタメルラン・ツァルナエフ容疑者(26)が昨年、ロシアを訪れた際の行動が捜査の焦点の一つになってきた。米連邦捜査局FBI)は動機の解明につながる可能性があるとみて、滞在中の生活について確認を急ぐ。
 
 タメルラン容疑者は昨年1月から約半年間、米国を離れてロシアに渡った。ロシア紙コメルサントによると、ロシアのパスポートの更新が目的で、両親が暮らすダゲスタン共和国マハチカラに滞在。隣接するチェチェン共和国でも親族や友人らと会ったという。
 
 同紙は親族の話として、同容疑者が約2年前から急速にイスラム教への信仰を深めたと伝えている。熱中していたボクシングを突如やめ、定期的にモスクを訪れるようになったという。
 
 両共和国ではロシア政府に反発するイスラム系過激派の活動が続いており、FBIは、滞在中にこうした過激派との接触がなかったかなどを調べる方針だ。タメルラン容疑者は米国に戻ってから、動画投稿サイト「ユーチューブ」のアカウントでジハード(イスラムの聖戦)に関するビデオを紹介している。
 
 また、これまでの調べによると、タメルラン容疑者が弟のジョハル・ツァルナエフ容疑者(19)に影響を及ぼしていた可能性が高いという。ボストンのメニーノ市長は21日のテレビ番組で、兄が「リーダー」で、弟が従っていたとの見方を示した。
 
 タメルラン容疑者を巡っては2011年に、ロシア政府が「過激派イスラムの強い信仰を持っている」と懸念を示し、FBIに照会したことが明らかになっている。米NBCは21日、ロシア側が昨年11月にもタメルラン容疑者についてFBIに質問をし、情報を渡していたと伝えている。
 
 一方、ロシア側ではイスラム武装勢力との関係に否定的な見方も出ている。チェチェン共和国のカディロフ首長はノーボスチ通信に対し「容疑者たちはチェチェンと関係ない。米国で暮らし、学んだのであり、事件は米国の治安機関の責任だ」と語った。
 
 ロシア、米国双方からテロリストと指定される人物が率い、チェチェンの独立などを目指すグループは21日にインターネットを通じて声明を出し、「我々は米国と戦っていない。カフカスを占領しイスラム教徒に対する残酷な罪を犯しているロシアと戦っている」と関係を否定した。