「がん幹細胞」を狙い撃ちする

がん「親玉」幹細胞狙う臨床研究へ 末期患者治療に期待 (www.asahi.com 2013年03月25日13時48分)
 
 がんの再発や転移の原因とされる「がん幹細胞」を狙い撃ちする臨床研究が4月上旬、国立がん研究センター東病院(千葉県)で始まる。がん幹細胞を標的にする治療の臨床研究は国内で初めて。手術で切れないがんでも根治できる治療法につながる可能性がある。
 
 がん幹細胞はがん細胞を生み出す「親玉」のようなもので、さまざまながんの中に存在することがわかっている。盛んに分裂するがん細胞は、抗がん剤放射線の攻撃を受けやすいが、多くのがん幹細胞はあまり分裂しない「休眠状態」。抗がん剤放射線が作る活性酸素などから身を守って生き残る性質もあり、再発や転移を起こす。
 
 東病院と慶応大のチームは、胃がんの幹細胞の表面にある特徴的なたんぱく質CD44vの働きを抑えると、活性酸素の攻撃に弱くなることを発見。潰瘍性大腸炎の治療薬として長年使われているスルファサラジンという飲み薬で、このたんぱく質の働きを抑えられることも見つけた。
 
 臨床研究ではまず、末期の胃がん患者数人に1日4回、最低2週間、スルファサラジンを飲んでもらい、安全性と有効性を調べる。
 
 東病院の大津敦・臨床開発センター長は「がんの大元を攻撃する治療は、従来の治療を超える効果が出る可能性がある」と話す。
 
 大腸がん幹細胞を狙い撃ちする大日本住友製薬の新薬は、北米での臨床試験(治験)が最終段階。また、赤司浩一九州大教授のチームは、サルで実験中の白血病治療を2年以内に患者を対象に臨床研究する計画だ。