睡眠をコントロールする

「夕方眠るのは最悪」 快眠のコツ、専門家に聞く (www.asahi.com 2013年02月28日12時38分)
 
 日々暖かくなり、進学や就職を前に環境が変わる人も多い春先は、睡眠で悩む人が増える季節でもあるという。「ぐっすり眠りたい」と願う人向けのビジネスに携わる専門家らを訪ね、上手に眠る方法や寝具選びのコツも聞いた。
 
■朝の光で脳を覚醒
 
 睡眠研究のスペシャリストが静岡市にいる。作業療法士で、睡眠改善インストラクターの肩書も持つ菅原洋平さん(34)。静岡県内外の企業から社員研修の講師として招かれ、「うまく眠るコツ」を伝授している。
 
 脳治療の専門病院でリハビリに携わり、治療の効果を引き出す術として睡眠のメカニズムを研究してきた。昨春、病院を退職して起業。「睡眠は自分でコントロールできる。その術を健康なうちに知ってもらえば、病気になる人を減らすこともできる。起業は、そんな思いからでした」
 
 菅原さん自身、掛川市で過ごした少年時代は不眠で苦しんだ。「朝、ぼーっとしたまま登校し、夕方、帰ると疲れて寝る毎日。この『夕方眠る』というのは最悪の生活習慣ですが、そんなことは誰も教えてくれなかった。知っていれば人生は変わったと思います」
 
 朝に起床する場合、体温は夕方に最も高くなり、未明にかけて下がっていく。ところが、夕方に寝てしまうと、このリズムが崩れ、肝心の夜に体温が下がらずに眠れなくなるという。
 
 朝の習慣も重要だ。「目覚めたら窓の近くへ行き、光を感じて脳を覚醒させること。春先は1年で最も気温の変化が大きく、気温の上昇に体を順応させるためにも、特に大切です」
 
 休日の「寝だめ」にもコツがある。遅くまで寝たまま、はだめ。「朝、普段起きる時間帯に部屋をいったん明るくし、二度寝をすればリズムは崩れません」
 
 菅原さんの指導や講演活動は目下、長時間や昼夜逆転の勤務が多い業種をはじめとした企業向けが中心。一般向けには昨年9月、初の著書「あなたの人生を変える睡眠の法則」を出版。首都圏などで話題となり、増版(現在第6版、計1万部超)を重ねている。4月には妊婦向けのDVD「睡眠セルフケア」(菅原さん監修)も発売予定だ。
 
 「睡眠をコントロールする術は、一度身につければ生涯使えます。規則的な生活が難しい人ほど、ぜひ学んで人生に生かしてほしい」と呼びかけている。
 
 著書などの情報は、菅原さんが代表を務める株式会社「ユークロニア」のホームページ(http://activesleep.net/)で参照できる。
 
■寝具はオーダーメードが売れ筋
 
 寝具店では、オーダーメードの商品が売れている。静岡市清水区にある創業95年の老舗「石川寝具ランド」社長の石川彰さん(66)は「10年ほど前からオーダー枕を作っていますが、ここ数年、定年後に生活が変わって眠れなくなったという団塊世代や、医師に『枕を替えてみたら』と勧められたという人の来店が急に増えた」と話す。
 
 石川さんによれば、寝具選びのポイントは「立っている時と同じ楽な姿勢で眠れること。また、体形などの変化に応じて見直すことも大事です」。買った時はぴったりのオーダー枕でも、体重や姿勢、敷布団の硬さなどが変わると合わなくなる。同店では購入者に対し、10年間は高さ調整などを無料で行っている。
 
 全国で66店舗を展開する「タナカふとんサービス」(愛知県一宮市)は、昨年から枕に加えて敷布団のオーダーメードも始めた。同社の担当者も「寝具は買って終わり、ではだめ。中の素材の交換など、購入後のメンテナンスのサービスも重視している」とする。
 
 今春さらに8店舗を増やす予定で、4月にJR東静岡駅北側に開業する大型商業施設「マークイズ静岡」もその一つ。県内では、浜松天王店、静岡パルシェ店と合わせ3店舗になる。
 
 「何度枕を替えても合わない」と悩む人が多い現状を受け、枕の貸し出しサービスを始めた店もある。静岡市葵区の「スリープスタジオモチヅキ」。会社名は「家具の望月」だが、7年前に寝具中心に切り替え、店名を変更。50種類以上、約150個の枕が並ぶ。
 
 それでも「枕がすべてではないですよ、とお客さんにはよく言います」と社長の望月尉司さん(57)。テレビでも有名な先生に枕を作ってもらったのにまだ眠れない、と新たな枕を探しに来る人も少なくない。
 
 そんな時は「生活習慣や寝室の環境なども見直してみては」と助言しているという。