素晴らしき新世界

サテンのおっちゃん頑張ってや 大阪の女子高生が応援歌 (www.asahi.com 2013年02月17日16時18分)
 
 ♪《串カツだけじゃなく/新世界には喫茶店が/実はいっぱいあるんやで》。18歳の女子高生ミュージシャンが、大阪・新世界(大阪市浪速区)に残る昔ながらの喫茶店の魅力を歌にした。3月10日を「サテンの日」と名づけて頑張る店主のおっちゃんたちへの応援ソングだ。
 
 新世界の喫茶・洋食店「DEN・EN(でんえん)」。テンポのよいアコースティックギターに合わせて澄んだ歌声が響く。声の主は、大阪市立淀商業高校3年、竹本結(ゆい)さん。大阪・ミナミのライブハウスなどで「よしだーまん☆」の名でライブ活動を続ける。応援ソング「茶しばこか@新世界」を練習中だ。
 
 きっかけは、1月上旬にDEN・ENを訪れた時のこと。新世界で別の喫茶店を経営する近藤正孝さん(49)と知り合った。
 
 近藤さんは、新世界が街開き100周年の活況に沸いた昨年の反動を心配していた。「にぎわいを持続せな、昭和後期みたいに街が沈む」。3月10日を語呂合わせで「サテンの日」とし、新世界の各喫茶店が特別メニューでアピールしたいという。
 
 串カツのイメージが強い新世界だが、東西約300メートル、南北約600メートルのエリアに、15店ほどの喫茶店がひしめく。半分近くが創業50年以上の老舗だ。
 
 近藤さんは竹本さんに喫茶店の昔話を聞かせた。「高校生の頃な、大人ぶって『サテンいこか』って言って、こっそりたばこ吸ったりしてな。慣れてくると『茶しばこか』なんてな」
 
 それを聞いた竹本さんは目を丸くした。「しばく? そんな誘い文句聞いたことない。めっちゃいい、ザ・大阪って感じ!」
 
 近藤さんはひらめいた。こういう世代の子にサテンの魅力を再発見してほしい。「新世界のサテンの歌、つくってや」。思わず頼んだ。
 
 竹本さんは、大阪らしく、アップテンポで楽しく、でもどこか懐かしい感じの曲を作った。さて、歌詞は……。ふだん友達と利用するのはファミレスで、喫茶店には行かない。新世界のサテンを回ると、驚くことばかりだった。
 
 メニューは手書きで、種類や呼び名も店ごとにバラバラ。「冷(レイ)コー(アイスコーヒー)、レスカ(レモンスカッシュ)って何ですか」。冷コーは、冷えたコーラだと思っていた。
 
 そして何より驚いたのは、店主たちの「新世界愛」のゆるぎない深さ。若い人と一緒に街を盛り上げたいんや、と熱っぽく語るその目はいつも真剣だった。高校卒業後、不安はあるけれど、アルバイトを続けながら愛する音楽を続けようと思っている今だからこそ、勇気をもらった気がした。
 
 ♪《昭和のにおいが漂う喫茶店/入るのに少し勇気いるけど》。おっちゃんたちの大好きな新世界の、古き良きサテン。その雰囲気を多くの人に伝えたい。そんな思いをこめ3月10日、DEN・ENで初めてお客の前で歌を披露する。