生き残る思想

胡理論、指導思想に格上げ 新指導部15日発足へ (www.asahi.com 2012年11月8日12時03分)
 
 中国共産党の指導部交代が行われる第18回党大会が8日、北京の人民大会堂で開幕した。胡錦濤総書記(国家主席)が活動報告(政治報告)で、自らが提唱した政治理論「科学的発展観」を毛沢東思想やトウ小平(トウは登におおざと)理論などに並ぶ指導思想とすると宣言。2020年までに国内総生産(GDP)と国民1人あたりの収入を10年比で倍増させるとの目標を掲げた。
 
 胡総書記は今大会で総書記を退く見通しだが、自らの理論を歴代指導者による指導思想と同列と位置付けることで、政治的な影響力の維持を図る狙いがある。閉幕翌日の15日に開く第18期中央委員会第1回全体会議(1中全会)で政治局常務委員と政治局員のメンバーが決まり、習近平国家副主席を総書記とする新しい党指導部が発足する。
 
 活動報告で、胡総書記は、自らが率いた10年の成果について「小康社会(ややゆとりある社会)の実現のために確かな基盤を築いた」とし、「総合国力や国際的な競争力と影響力はさらなる大台に上った」と強調。そのうえで、「科学的発展観」について、「長期的に党が堅持すべき指導思想」と位置づけ、胡体制の成果を党の歴史に刻む姿勢を示した。
 
 経済面では、08年の金融危機で「全世界で率先して景気を持ち直した」と世界経済を下支えした自負を述べた。「健全な発展を維持し、持続可能な発展方式への転換に大きな進展があった」とし、経済発展方式の転換を加速する必要性を訴えた。
 
 外交では「平和的発展」の原則を堅持するとしつつも、尖閣諸島問題などを念頭に「国家の主権を断固として守り、外部のいかなる圧力にも屈しない」と強調。「国家海洋権益を断固守り、海洋強国を建設する」とした。
 
 また、「国防と軍隊の近代化建設に大きな発展が求められている」として、20年までに軍備のIT化などの大幅な進展を目指すとした。
 
 胡体制の下で党や政府高官の腐敗問題が深刻化した事実を踏まえ、「この問題が解決されなければ党も国家も滅ぶ」と強い危機感を表明。反腐敗の取り組みを強める必要を訴えた。
 
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 〈科学的発展観〉 経済成長至上主義がもたらした環境汚染や都市と農村に代表される「貧富の格差」を改善し、持続的な発展を目指そうとの考え。胡錦濤総書記が提唱し、2007年の党大会で党の憲法である党規約に盛り込まれた。しかし、「党の行動指針」とされるマルクス・レーニン主義毛沢東思想、トウ小平理論、江沢民・前総書記の「三つの代表」のような指導思想ではなかった。