おにぎりとおみそしる

「おにぎりとおみそしる」避難児童の作文 感謝と望郷と (www.asahi.com 2012年3月31日23時36分)
 
 東日本大震災の影響で、福島県浪江町から埼玉県ふじみ野市に避難している小学4年生の女の子が書いた作文「おにぎりとおみそしる」が注目を集めている。埼玉県教育委員会が震災に関わる出来事を題材に作った道徳教材「彩の国の道徳 心の絆」にも採用された。
 

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 おにぎりとおみそしる
 
 小さな白いおにぎりと具のないおみそしる これは、わたしにとって、わすれる事のできないごはんです。
 
 わたしは、東日本大しんさいで、自分の家にいられなくなり、ひなん所で生活していました。その時の食事の内ようです。
 
 それまでのわたしは、おやつを食べて、食事の時には、テーブルにはたくさんのおかずがあって、食後には、デザートまでありました。それが、あたり前だと思っていました。
 
 とつぜんのさいがいを受け、ひなん所で生活をしてみて、わたしが食べていたものが、とてもめぐまれていた事に気が付きました。何日間も、おにぎりとおみそしるだけを食べていましたが、ふしぎとあれが、食べたい、これが、食べたいとは、思いませんでした。おなかがすいて、食べる事ができることだけで、うれしかったからです。
 
 白いおにぎりから、中に梅ぼしが入ったおにぎりになった時は、とてもうれしかったです。
 
 ひなん所から、東京にいどうした時に、はじめて、おかずのついたごはんを食べました。弟が大好きな野菜を見て、
 
「食べていいの。」
 
 と聞きながら食べていました。とても、うれしそうでした。
 
 今もまだ、自分の家には帰れないけれど、テーブルには、わたしの好きな食べ物がたくさんならびます。季節のフルーツもたべられるようになりました。ひなん所で、テーブルも無くて、おふとんをかたづけて、下を向いて食べた小さなおにぎりと具のないおみそしるの味は、ぜっ対にわすれません。こまっているわたし達にごはんを作ってくれた人達の事もわすれません。
 
 ひなん所にいた時は、あまりわらう事ができませんでした。でも、今は、わらってごはんを食べています。つらい事やこわい事もたくさんありました。今は、ごはんを食べて、おふろにはいって、おふとんにねむれる事が、とてもうれしいし幸せです。
 
 これからも、食べ物をそまつにしないで、楽しくごはんを食べていきたいと思います。 (全文)
 

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 この作文を書いたのは、ふじみ野市立上野台小学校4年の常盤桃花さん(10)。震災直後、余震におびえながら避難所で食べた食事の記憶をたどり、支えてくれた人々や今の日常に感謝する内容になっている。昨年の夏休みに書き、今年度の埼玉県「食をめぐる作文」小学生の部で最優秀賞に輝いた。