日本語の論理とヨーロッパ語の論理

 大野晋『日本語練習帳』(岩波新書)と野内良三『日本語作文術』(中公新書)を読む。
 
 大野は、日本語のセンテンスの構造を理解する上で、「ハ」と「ガ」の違いに留意するよう促し、「ハ」の働きについて
  (1)問題(topic)を設定して下にその答えが来ると予約する
  (2)対比
  (3)限度
  (4)再問題化
 を、また、「ガ」については
  (1)名詞と名詞をくっつける
  (2)現象文をつくる
 を挙げる。野内はこれを「選択的主題化」と「排他的主題化」という述語で説明する。
 
 文章作法の心得として両者が挙げているのは、接続助詞の「ガ」を多用するな、ということ。さらに大野は推敲の段階で文中の「のである」「のだ」を徹底して削除するという。
 
 一方、野内は「日本語の主語は省略可能なことからも分かるようにヨーロッパ語のように主役ではない。必要なら補う『補語』(修飾語)にしかすぎない」とし、「主語を頭に置く必要は微塵もない」と指摘する。この理論から、実用文では「文の単位は長い順に並べる」ことを提案している。
 さらに、「発話環境依存的」であり「主観的」な日本語でも抽象的=観念的内容を表現するために、無生物主語を立てた「名詞中心の構文」への和文和訳の訓練を勧めている。