もの言はぬ研ぎ屋の業や

芥川から虚子への手紙見つかる 近況と自作句記す (www.asahi.com 2011年11月14日22時53分)
 
 作家の芥川龍之介(1892〜1927)が俳人高浜虚子(1874〜1959)に宛てた手紙が、兵庫県芦屋市の虚子記念文学館(稲畑汀子館長)で発見された。同館が14日発表した。芥川から虚子に宛てた手紙が見つかったのは初めて。近況と自作句が記されており、文面から両者の親密さがうかがえる。
 
 手紙は虚子の遺品資料の中にあり、伊藤一郎・東海大教授が確認した。大正8(1919)年6月27日付で、縦約23センチの便箋(びんせん)4枚に毛筆で書かれている。
 
 芥川は、京都で河鹿蛙(かじかがえる)の鳴き声を聞きに行き、同行者と虚子の小説の話をしたことなどを伝えたうえで、最近、原稿の催促ばかりで熱心に俳句を詠めないが、「全くやめてゐては上達の期(ご)なささうに付き」と9句を並べ、講評を求めた。虚子は「もの言はぬ研ぎ屋の業や梅雨入空(ついりぞら)」に二重丸をつけ、主宰する「ホトトギス」に掲載。ほか3句に丸をつけている。「もの言はぬ」を除く8句は死後に編まれた芥川の句集に収録された。
 
 同館の小林祐代(さちよ)・学芸員は「2人の交流は分かっていたが、これほどの親しい関係は知られていなかった」と話す。手紙は15日から来年3月4日まで同館(0797・21・1036)の「漱石と龍之介―文人俳句の世界」展で公開される。