局所的な臨界?

「臨界なかった」と断定 キセノンは自発核分裂 東電 (www.asahi.com 2011年11月3日13時51分)
 
 東京電力は3日、福島第一原発2号機の原子炉内で核分裂反応が連鎖的に起こる「臨界」はなかったと断定し、発表した。検出されたキセノンの濃度や原子炉の温度、圧力のデータから核分裂の状況を推定し、臨界状態には達していないと判断した。
 
 検出されたキセノンは、原子炉の燃料に由来する放射性物質キュリウムなどが自然に核分裂を起こす「自発核分裂」で発生したと見ている。これは、通常の原発停止中にも原子炉内で起こる現象。年内に冷温停止状態を目指す工程表の達成にも影響がないという。
 
 2号機では、格納容器内の気体を浄化するガス管理システムで処理した気体を1日に調べた結果、放射性キセノン133、135を検出した。2日も測定したが、キセノン135が検出された。キセノン133は半減期が約5日、キセノン13が約9時間と、比較的短いため、キセノンが検出されたことで、最近でも原子炉内で、核分裂が断続的に続いていることが明らかになった。
 

福島第一原発2号機、核分裂の可能性 ホウ酸水を注入 (www.asahi.com 2011年11月2日11時51分)
 
 東京電力は2日未明、福島第一原発2号機の原子炉内で溶けた燃料が核分裂反応を起こしている疑いがあるとして、反応を抑えるためにホウ酸水を注入した。核分裂反応が連鎖的に続く臨界が局所的に起こった可能性もあるという。発電所周辺の放射線量の測定値に異常な変動はみられないという。状況によっては年内の事故収束を目指している工程表に影響する恐れがある。
 2号機では、放射性物質の放出を抑えるため、格納容器内の気体を浄化するガス管理システムが10月28日から稼働していた。東電によると、処理した気体を1日に調べた結果、放射性キセノン133、135とみられる放射性物質を検出した。ほかの物質が間違えて検出された可能性があるので、現在、研究機関で再評価をしている。
 
 放射性キセノンはガス状で、炉内で燃料のウランが核分裂する際にできる。放射性物質の量が半分になる半減期は、キセノン133が約5日、135が約9時間と短い。検出されたとすれば、事故直後のものとは考えにくく、今も溶けた燃料で核分裂反応が起きていることを示すものだ。
 これを受け、東電は2日午前2時48分から、原子炉を冷却するための水にホウ酸を混ぜて核分裂反応を抑える措置をとった。ただし、採取した気体からは核分裂でキセノンと一緒に生じる放射性ヨウ素は検出されなかった。また建屋周辺で核分裂の際に出る中性子線は検出限界以下だった。
 東電原子力・立地本部の松本純一本部長代理は2日の会見で「一時的に小規模な臨界状態になった可能性は否定できない。しかし、原子炉の温度、圧力の急な上昇はみられないため、大規模な臨界状態ではないと判断している」と話した。
 
 大規模な臨界は、通常の原子炉のように、燃料同士の配置がきちんと計算され、そのすき間に核分裂を促す水があるような状態でないと起きない。
 1〜3号機は原子炉への注水によって事故後半年たった9月下旬に、安定した冷却状態とされる100度以下になった。これを受け、政府と東電では年内にも事故収束のための工程表を達成するとの見通しを示していた。2号機は2日午前5時現在で原子炉圧力容器の底の温度は76度にまで下がった。
 
 ガス管理システムの気体の測定では、水が燃料の放射線で分解されることで生じる水素の濃度が10月30日に1%から2.7%まで上昇。爆発事故を防ぐために、不燃性の窒素の注入量を増やしていた。水素の増加は、核分裂反応と関係があった可能性もある。
 東電によると、キセノンは今回初めて分析して出てきた。過去に計測していれば検出したかもしれず、事故直後から核分裂によって発生し続けていた疑いがある。2号機と同じように燃料が溶融した1、3号機でも起きている可能性もあるという。
 
 経済産業省原子力安全・保安院は2日午前に緊急の記者会見を開いた。森山善原子力災害対策監は2号機の状態について「局所的に核分裂の起きている可能性は否定できないが、全体として安定している」と話した。