自ら増殖する人工細胞

温度変化で増殖する人工細胞 東大のチームが作製に成功 (www.asahi.com 2011年9月5日3時0分)
 
 「自ら増殖する人工細胞」の作製に、菅原正東京大名誉教授らのチームが成功した。使った原料は、簡単な有機化合物。地球に生命が誕生した謎に迫る手がかりになりそうだ。成果は5日の英科学誌ネイチャー・ケミストリー(電子版)に掲載される。
 
 研究チームは、脂肪酸に似た有機化合物を使って、水溶液の中で自然に球状になる器を作製。ここに、DNAやDNA合成酵素などを入れ、液の温度を95度に上げ、65度に下げるという作業を繰り返した。
 温度の上げ下げと合成酵素の働きで、DNAの複製ができ、20回繰り返すと約100万倍に増えた。
 DNAが増えた段階で膜の材料の有機化合物を加えると、DNAの一部が内壁にくっつき、そこが活性化されて球状に膨れた。膨れた膜は、細胞分裂するようにちぎれ、DNAも入った新しい「人工細胞」ができた。
 
 DNAはマイナスの電気を帯びており、そこにプラスの電気を帯びた膜の材料が集まり、DNAを中心に自然に増えたと考えられた。今回は大腸菌由来のDNAを使ったが、人工的に合成したものでも同様の増殖は可能だという。