神保哲生+宮台真司 『地震と原発 今からの危機』

 エリートが民衆のパニックを恐れてパニックになって社会を滅茶苦茶にする。人々の合理的行動計画にはマクシミン(最悪自体最小化)戦略を可能にすべく最悪シナリオの認識が必須だが、官邸がこれを意図して妨害した。
 官邸による妨害を単に愚昧なエリート・パニックと詰ることはできない。そこには確かに愚民政策がある。だが我々が愚民でないとは断言できない。政府発であれマスコミ発であれ誰発であれ、この情報さえ信じれば大丈夫という依存癖がある限り、我々は愚民そのものだからだ。 (p.238/宮台真司「『どう生きるのか』という本当の問いに向き合うとき」)
 
 東南海では、あと15年ぐらいの間には、マグニチュード9を超える地震が80%超の確率で起こるだろうと予測されている。原発が安全か、危険かを問うことは滑稽でしかない。「原発はたかが人間がつくったマシン。そこそこ安全で、そこそこ危険なのが当たり前」なのだ。
 
 原発の根本的なリスクは「核物質の反応を人間の力では止められない」ということ。ウランの埋蔵量に限りがあり、再処理技術の完成も向こう50年は期待できず、なおかつその維持と開発に膨大なコストが見込まれる現在、我々に残された選択肢はそう多くはない。それは我々が未来に向けてどのような社会をデザインしようとしているのかという想像力の問題にも関わっている。