圧倒的な存在感に吸い込まれるように

築106年の下宿「本郷館」解体へ 「圧倒的な存在感」 (www.asahi.com 2011年7月30日14時0分)
 
 築106年の東京・本郷の下宿「本郷館」が7月いっぱいで取り壊されることになった。関東大震災東京大空襲にも耐えたが、建物の老朽化が激しいとして家主側が解体を決定。かつての住人や建築家らがその姿を惜しんでいる。
 
 本郷館は木造3階建て。1905(明治38)年、東京大学の正門から約200メートルほど離れた細い路地に建てられた。延べ床面積は約1500平方メートル、中庭を囲むように76室がある。風呂はなく、トイレや炊事場も共同。明治時代の大規模な木造下宿が当時のまま残っている例は珍しいという。かつて「放浪記」の作家、林芙美子が住み、学生らも大勢下宿した。
 
 昨年8月末まで22年間、2階の一室に入居していた会社員の小松栄美さん(46)は巨大な木造建築に一目ぼれし「圧倒的な存在感に吸い込まれるように住み始めた」。80歳ぐらいの管理人夫婦と毎日かわす「おはよう」という何げない会話が心地よかった。