大学の「自治」

投稿事件で被害届、京大に抗議殺到 同志社は学内対応 (www.asahi.com 2011年3月8日22時32分)
 
 大学入試問題をネット投稿したとして予備校生(19)が偽計業務妨害容疑で逮捕された事件で、不正が発覚した4大学の対応が割れている。警察に被害届を出した京都、早稲田、立教の3大学に対し、同志社大は警察へ届けず、学内で対応する。京都大には「大学側にも落ち度がある」などと批判の声が殺到。カンニングへの対応をめぐり大学の「自治」が問われそうだ。
 
 京都大が問題のネット流出を把握したのは2月26日午前11時半すぎ。英語試験が終わった直後、大学に電話で指摘があったという。28日午後には京都府警川端署に被害を申告。今月3日午前には「入試の公平性を揺るがした」として、偽計業務妨害容疑での被害届を府警に出した。
 
 府警はネットへの接続記録や、大学側からの情報をもとに予備校生を特定。3日午後、同容疑で逮捕した。しかし、当初から「法に基づく警察の捜査を求める」(広報担当)と打ち出した京都大には厳しい批判が相次いでいる。
 大学側が受け付けた電話の件数は4〜8日で約200件に。受験生の保護者や卒業生らからで「監視が甘かった大学に落ち度がある」「カンニングなら不合格にするだけでいい」などと抗議する内容が大半だったという。
 
 府警の調べなどで、予備校生が試験会場の中で携帯を操作したとみられることが明らかになると、大学側が「監督はちゃんとしていた」(松本紘総長)と強調したことも、非難を浴びた。入試で監督経験がある同大学の教員は「きちんと調査もしないまま警察に対応を丸投げし、大学の自治を放棄した」と嘆く。
 
 警視庁へ被害届を出した早稲田、立教の両大学にも、再発防止を求める意見などが電話やメールで寄せられた。ただ、両大学とも「真相究明のためには被害届の提出が必要」と説明し、取り下げる考えはないという。
 
 一方、同志社大は8日、警察に被害届を出さない方針を明らかにした。逮捕された予備校生は未成年▽単独犯の疑いが強い▽カンニング行為による入試業務への影響は軽微――などを考慮したという。
 同大学の調査委員会は、受験生の答案とネット投稿された解答を照合して「不正をした受験生を特定できなかった」と結論づけた。大学側は予備校生の合否についても「個人情報なので、個別の受験生に関することは答えられない」(広報)としている。