地下700メートルの世界

地下に17日、33人の命つないだリーダー チリ落盤 (www.asahi.com 2010年8月25日21時3分)
 
 鉱山の落盤事故により33人の作業員が地下深く閉じこめられている南米チリで、事故発生以降、地上と隔絶されていた17日間の様子が明らかになってきた。地下700メートルの閉鎖空間で、33人の作業員全員が健康な状態で生存できた要は、パニックに陥らないよう、規律を守らせたリーダーの強い指導力だった。
 
●救出努力
 
 チリのピニェラ大統領は24日、「建国200年を祝う9月には間に合わないが、クリスマスや新年はみなで祝えるだろう」などと語った。
 作業員を1人ずつ引き上げられるよう直径70センチ弱の穴を大型掘削機で今後つくる予定だが、1日に掘り進められる限度は約20メートル程度。救出には4カ月はかかると試算されている。
 救出用の穴とは別に、直径15センチほどの穴が二つ、作業員のいる地下700メートル付近までドリルですでに通じている。一つは食事や脱水症状に効く薬などをカプセルに入れて送る穴で、もう一つは通信のための穴。換気口専用の三つめの穴も掘削中だ。
 23日に穴を通して、食料やブドウ糖などが初めて届けられた。AP通信によると、坑内の気温は32〜34度。狭く衛生状態の悪い場所で大勢が生活しているため、感染症が懸念される。
 
●リーダーの力
 
 23日に、通信機器を通じゴルボルネ鉱業相と初めて会話したリーダーのルイス・ウルスアさん(54)は「みな、元気で助けを待っています」と話した。地下からは、全員でうたうチリ国歌の音声が聞こえ、テレビで放映された。
 落盤時に有毒ガスが発生しなかったこと、通気口がつぶれなかったことが、奇跡の生存につながった最初の幸運だった。
 しかし、その後、規律が保たれたのは、ウルスアさんの指導力あってこそだった。
 
 避難所に備蓄されていた食料を33人で等分にし、1日おきに、缶詰のツナを2さじ、クラッカーを1枚の半分、牛乳を半カップ、缶詰の桃1切れを食べるよう分配した。本来は、3日間で食べ終わってしまう量だった。
 作業員のいる地下の避難所は広さ約40平方メートルで、天井の高さが4メートル。このほか、人が移動出来る坑道が約2キロあるが、その場所を「寝る場所」「食べる場所」「その他必要な場所」と三つに分けた。また、新たな落盤に備えて、交代で寝ずの番もしていた。
 作業員は、1人平均8キロほど体重が落ちているというが、医師らは、「この状況下にしては健康状態がよいようだ」と驚いている。
 
 こうした狭い場所で過ごすのは、潜水艦の乗組員と似た状況という。地元メディアは「他人に対して、よほど寛大な心を持っていないと、このような状況には耐えられない」と伝えている。
 

落盤事故で地下に17日間、33人全員無事 チリ (www.asahi.com 2010年8月23日11時39分)
 
 南米チリ北部コピアポ近郊のサンホセ鉱山で今月5日に落盤事故があり、ピニェラ大統領は22日、地下に閉じこめられ生存が絶望視されていた33人の労働者全員が、事故から17日たった現在も生きている、と明らかにした。
 
 AP通信や地元のメディアによると、救助隊がドリルで穴を掘り地下700メートルに探査機を下ろして引き上げたところ、「33人は避難所で無事」とのメッセージが書かれた紙が付いていた。労働者の1人が妻に向けて「愛している」と記した手紙もあった。
 手紙には、避難所の天井から漏れていた水を飲んでいたと説明があった。遠隔操作のテレビカメラが地下に下ろされ、労働者たちの元気な姿の映像も映し出された。
 
 ピニェラ氏は地元メディアにこのメッセージを読み上げ、「チリ全土が喜んでいる」と語り、「カメラに映っていた労働者たちは手を振っていて、彼らの目は喜びに満ちていた」などと話した。
 チリ各地で、市民らが車のクラクションを鳴らし、広場に集まって祝った。
 
 同鉱山では、銅や金などを採掘していた。地盤が緩くなっているために、救援活動は困難を極め、救出には4カ月はかかる見込みだが、食糧や水などを差し入れるという。