武器を持つ人

弥生時代の石棺に人物画、呪術師か 北九州・城野遺跡 (www.asahi.com 2010年7月22日11時1分)
 
 北九州市小倉南区の城野遺跡で、弥生時代終末期(3世紀前半ごろ)の墓の石棺に、武器らしいものを持つ人物像が描かれていることがわかった。弥生の石棺に描かれた人物画は極めて珍しく、弥生人の葬送儀礼を知る貴重な手がかりになりそうだ。
 
 城野遺跡は同市芸術文化振興財団の埋蔵文化財調査室が発掘してきた。昨年、周りに溝を巡らせた方形周溝墓が発見され、子供用の石棺が見つかった。石棺の内側には赤い顔料が塗られ、頭側の板に、大きさ約20センチの人物の上半身が薄く彫り込まれていた。右手に武器、左手に盾のようなものを持っている。武器とすれば、弥生遺跡で出土する戈(か)とみられる。胴体には格子模様、顔には複数の目のような表現があるという。
 
 弥生時代の土器などには、武器を持つ人物が描かれたものが見つかっているが、それらは、農耕儀礼を表しているとみられている。だが、今回の人物像について、設楽博己・東京大教授(考古学)は「石棺にあったということは、墓の中で邪霊をはらうものと考える方が理解しやすい」とみる。
 
 さらに、古代中国の文献「周礼」に登場する呪術師「方相氏(ほうそうし)」ではないかとの指摘も出ている。方相氏は四つ目の面をかぶって戈と盾を持ち、律令時代の日本では宮中の、鬼を払う追儺(ついな)の儀式にも採り入れられた。ただ、石棺の絵は線が細く、細部もはっきりしないため、研究者のなかには慎重な見方もある。同市教委は「これからさらに詳しく検討したい」としており、近く石棺の一部を現場から屋内に移し、調査を続ける予定だ。