勝間和代+宮崎哲弥+飯田泰之 『日本経済復活 一番かんたんな方法』

 近年、メディアで注目を集める評論家2人と、若手経済学者による「日本経済復活=脱デフレ」をめぐる鼎談。デフレの正しい解釈は「価格が下がること」ではなく、「失業が増えること」だ。おカネの供給を増やせばデフレ脱却は可能、そのために政府、日銀が決断を下せるよう働きかけていこうというのが大筋である。
 
 デフレスパイラルによる「経済の収縮」はメディアでもよく耳にするので、改めて「デフレ脱却」を阻む国内の「見えない壁」の厚さに驚かされる。飯田泰之の「定常型社会論というのは、放っておいてもある程度は生産効率が上がるということを完全に見落としているんですよね。効率が2%上昇して経済成長がゼロなら2%失業が増加する。この2%失業をどうするのかという提案なしの定常型社会論は寝言です」(p.61)という発言は明快。
 
 一方で、宮崎哲弥の例えば次のような一節、「…消費飽和論者の想定と違って、そう簡単に資本主義の運動は減速しません。現にサブプライム・ショック後も、若干の調整を経ながら、資本主義は作動し続けている。無数の差異から無数の欠如が生成され、無数の欠如から無数の欲望が励起され、無数の欲望から無数の差異が分節されるという連鎖はなお傷一つ受けていない」(p.191) …これは現代思想のパロディか? すぐ後に続く飯田泰之のセリフ、「そもそもデフレ・インフレというのは貨幣的な現象なので、欲しいものがあろうがなかろうが、インフレになるときはなるし、デフレになるときはなるんです」というような切れ味の良さこそが、評論家に求められるべき真骨頂のはずなのだが?