2012年の「強盛大国」

映画「2012」にピリピリ? 見た住民を北朝鮮逮捕 (www.asahi.com 2010年3月25日3時4分)
 
 北朝鮮関係筋によると、同国内で米映画「2012」をDVDで見た住民が逮捕されている。同作品は2012年に巨大な災害が起きて人類が滅亡の危機に直面する内容だが、北朝鮮にとって2012年は故・金日成国家主席の生誕100年で、「強盛大国の大門を開く」とする重要な年。その年に「人類滅亡」とは許し難い内容というわけだ。
 
 同作品は、「インデペンデンス・デイ」や米国版「ゴジラ」などを手がけ、災害やパニックの描写で定評のあるローランド・エメリッヒ氏が監督し、昨年公開された。2012年に地球規模の地殻変動が起き、巨大地震、大津波、大噴火などが立て続けに起きる中で繰り広げられる人間模様を描く。北朝鮮にも中国から海賊版DVDが流入しているとみられる。
 関係筋によると、北朝鮮の都市部に住む男性が2月、中国から送ってもらったDVDを観賞したところ、知人が当局に密告し、逮捕された。当局は「こんな映画を見ることは、国家の発展に対する重大な挑発」と説明したとされ、懲役5年以上の罪に問われる可能性があるという。関係筋は、同様の摘発は各地で何件も起きていると指摘する。
 
 北朝鮮は09年に国民に過酷な労働を強いる生産向上運動「150日戦闘」「100日戦闘」や、デノミをはじめ大規模な貨幣改革を行った。いずれも強盛大国となる2012年に関連した動きとみられるが、成果は見えず、逆に社会の混乱を招いている。「2012」に絡む摘発は、「強盛大国」につながる経済の立て直しが思うようにいかない金正日体制の焦りをうかがわせる。