河合隼雄+中沢新一 『仏教が好き!』

 「大学に入って宗教というものを本格的に勉強し始めたときに、最も関心があったのは、エリアーデショーレムアンリ・コルバン井筒俊彦、という人たちでした」(中沢)
 
 ユダヤ教キリスト教イスラム教といった「一神教」は「人間と神との間に、それはもう、いかに大変な非対称の関係をつくりあげるかに全力をあげているのに、ひとり仏教だけが、大宗教でありながら対称的関係ということを重視している」(中沢)。
 
 「ユダヤ教キリスト教イスラム教は、新石器的な魔術の文化を否定することによって、国家を乗り越えようとしましたが、仏教はそれとは反対に、むしろ新石器的な『野生の思想』を積極的なかたちで生かすことで、国家を乗り越えて、普遍性に立とうとした」(中沢、p.113)
 
 (中沢)「量子論というものが、まずマトリックスの思考として生まれたことが、決定的に重要だと僕は思うのですね。そして、それが、仏教と量子論を結びつけている、本当の絆なのです」
 (河合)「マトリックスはまさに曼荼羅です。『胎蔵界曼荼羅』、英語にしたら『マトリックス』」
 
 ユングレヴィ=ストロース井筒俊彦といった思想家を自在に引きながら、9・11後のポスト宗教=仏教の世界について語る。文字通り「仏教が好き」になりそうな本。