河合隼雄+中沢新一 『ブッダの夢』

 地下鉄サリン事件が発生した1995年3月20日を挟んで、1991年6月から97年1月にかけて行われた「宗教」をめぐっての6つの対談を収録。『箱庭療法の宗教性』では、実際に河合隼雄から箱庭療法を受けた患者が作成した箱庭のカラー写真12点も収められている。
 
 『夢記』の明恵(松枝清顕の『夢日記』!)に始まって、ラカン無理数鈴木大拙の『日本的霊性』、宮沢賢治アメリカ・インディアン神話、ユングスピノザライプニッツハイデガー夏目漱石南方熊楠など、言及するテーマの境界性がスリリングで面白い。
 
(中沢)スピノザライプニッツは、今、やっぱりとっても重要な二人ですね。今の人間のかかえている魂の問題は、スピノザの汎神論というか無神論でないと、解けないことが多い。全部神だということは神なんて言う必要もないということですから。その意味で無神論だと思います。無神論に立ってその中から倫理を導き出すわけでしょう。しかもそれを論理的に導き出した。この冒険はすごい。
(河合)すっごい。
 
(中沢)スピノザも最終的にはニルヴァーナへ行くと思います。
(『善悪をこえる倫理』p.181、183 一部抜粋)