1冊を5分間だけ読む

鳩山首相:「勉強したい」…内田樹さんの本など28冊購入 (毎日新聞 2010年1月11日19時43分)
 
 鳩山由紀夫首相は11日、東京・丸の内の書店「丸善・丸の内本店」を訪れ、経済書思想書など計28冊を自費で購入した。記者団から経済書などが多かった理由を聞かれると「資本主義も新しいものが求められており、日本の風土にどう生かしていくか勉強したい」と語った。
 
 編集工学者・松岡正剛氏らが企画した書店内の特別コーナーを訪れ、同氏の勧めを聞きながら約1時間かけて選んだ。購入したのは▽内田樹著「日本辺境論」▽デビッド・ハーベイ著「ネオリベラリズムとは何か」▽ロバート・ライシュ著「暴走する資本主義」▽佐藤優著「日本国家の神髄」▽トーマス・フリードマン著「フラット化する世界」など。
 首相は「全部読むのはえらい話だ。1冊を5分間だけ読んでキーワードをつかむだけでも意味があると言われたが、5分掛ける28冊って結構大変だな」と苦笑いしていた。
 
書籍購入「5分かける28冊って結構大変だな」 1月11日午後3時40分ごろ〜
 ※丸の内ホテル前。午前11時40分から約1時間、本を購入。その後、編集工学者の松岡正剛氏、松井孝治官房副長官丸善社長と丸ノ内ホテルで食事、部屋に移って懇談。
 
Q:今日、本28冊を買って、経済書思想書が多かったようですが、今後このような本を読んで、今後の国政にどのように生かしていければという考えでしょうか。
A:生かしたいと思いますけど、これはやはり私はやはり資本主義も新しいものが求められている。それを日本の風土にどういうふうに新たに生かしていくかってことはね、勉強したいと思っていろんな角度から本を購入させてもらいました。知の巨人のまさに松岡先生からいろんなご指導をいただいて、大変参考になりました。
 
Q:その後2時間くらいお話をされていましたが、どのような話をしたのでしょうか。
A:だからこの日本語というもののすばらしさとかね、いわゆる本を読むことの重要性とかですね、さまざまいろんなお話を、示唆に富んだ話をいただきましたけど、細かいことは申し上げません。
 
Q:先日、松岡さんを公邸に招いていましたが、今日は松岡さんのお招きでしょうか。
A:その、その続きですよ。まだ、まだまだおうかがいすることたくさんありましたから、これからも何度もお招きをして話をうかがいたいと思うすばらしい方ですね。
 
Q:本ですが、これから忙しくなると思いますが、全部読めそうですか。
A:だから、これ全部読むのはえらい話だと申し上げたんですけど、例えば、1冊の本でも5分間だけ読んで、そのキーワードをつかむことだけでも大変意味がありますよというふうに言われましたけど、5分かける28冊って結構大変だなと思ってね。まあ、好きなところから読ませてもらいます。
 
 ※以下、購入書籍
▼日本辺境論(内田樹
▼逝きし世の面影(渡辺京二
▼闘うレヴィ=ストロース渡辺公三
▼日本国家の神髄(佐藤優
▼「情」の国家論(山本峯章、村上正邦佐藤優
新自由主義か新福祉国家か<民主党政権下の日本の行方>(渡辺治、二宮厚美、岡田知弘、後藤道夫)
▼文化力−日本の底力(川勝平太
▼ワールド・カフェ〜カフェ的会話が未来を創る〜(アニータ・ブラウン、デイビッド・アイザックス、ワールド・カフェ・コミュニティ著、香取一昭、川口大輔訳)
ネオリベラリズムとは何か(デビッド・ハーベイ著、本橋哲也訳)
新自由主義−その歴史的展開と現在(デビッド・ハーベイ著、渡辺治、森田成也、木下ちがや、大屋定晴、中村好孝訳)
▼談志 最後の落語論(立川談志
▼昭和史<戦後篇>1945−1989(半藤一利
レヴィ=ストロース講義(クロード・レヴィ=ストロース著、川田順造渡辺公三訳)
▼暴走する資本主義(ロバート・ライシュ著、雨宮寛、今井章子訳)
▼日本型資本主義と市場主義の衝突−日・独対アングロサクソンロナルド・ドーア著、藤井真人訳)
日本語が亡びるとき−英語の世紀の中で(水村美苗
動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか(福岡伸一
▼確率論的思考 金融市場のプロが教える 最後に勝つための哲学(田渕直也)
▼21世紀の歴史−未来の人類から見た世界(ジャック・アタリ著、林昌宏訳)
ブラック・スワン(上)−不確実性とリスクの本質(ナシーム・ニコラス・タレブ著、望月衛訳)
ブラック・スワン(下)−不確実性とリスクの本質(同)
▼新しい資本主義(原丈人
▼フラット化する世界(上)(トーマス・フリードマン著、伏見威蕃訳)
▼フラット化する世界(下)(同)
金融危機後の世界(ジャック・アタリ著、林昌宏訳)
▼世界の経済が一目でわかる地図帳−お金、人、資源、環境……世界はこう動く!(ライフサイエンス著)
虹色のトロツキー(7)(安彦良和
虹色のトロツキー(8)(同)

 日本の政界のトップ・エグゼクティブに勧める、松岡正剛なりの「2010年劈頭のベスト28」と捉えると、貴重なインデックスかも知れない。民主党首が手にする一冊としては「微笑ましい」版元のコミックスも混じっているようだが(同書は『千夜千冊』でも紹介している)。首相はスタンフォード大でPh.D.を取得しているのだし、「ブラック・スワン」などは(読みづらい)翻訳よりも、むしろ原書を勧めた方が良かったのではないか(ライシュやフリードマンも同)。
 
 ちなみに、松岡の近著『連塾 方法日本II』には、鳩山首相が塾生として参加しているシーンが収められている。