13歳からの大学授業 『学問のツバサ』

 知のアンソロジー。2008年度に神奈川県のとある私立中高(桐光学園中学校・高等学校)が実施した『土曜講習』全18回の授業内容をまとめたもの。
 
 まず、講師陣が豪華。「哲学」「宇宙科学」「芸術」「生命科学」「社会科学」の5部に分かれているが、「哲学」の項が鷲田清一永井均小林康夫野矢茂樹宇野邦一というラインアップ。ほかにも、佐藤勝彦、谷川渥、浅島誠、茂木健一郎大澤真幸など、すべての項目で文字通り第一線の研究者が担当している。芸術が絵画、彫刻に偏り、文芸、音楽、舞踊系の紹介がないこと、数学、歴史学、経済学、情報学、臨床医学などの領域が欠落していることなど、現代の代表的な学問領域すべてを網羅できているわけではないが、中高生向けのアンソロジーとしては秀逸。編集にかかわった教員のクオリティの高さに瞠目させられる。
 
(注)未読だが、同シリーズには第1集として『大学授業がやってきた! 知の冒険―桐光学園特別授業』があり、こちらはアメリカ現代史の油井大三郎をはじめ、ロボット学、情報通信学、農学分野などの研究者が参加しているようだ。
 
 学びは、たんに知識を蓄えることではなく、自分自身を変えていくことにほかならない。全体のコンテクストがあり、その特異点をつかんで全体をもう一回つくり直す。これは自分の世界を自分でつくり直していく力でもある。 (小林康夫 『学ぶことの根拠』)
 
 こんな授業を1年間通じて受けられた生徒は幸せだ。『岩波ジュニア新書』などと同じく、大人でも十分に鑑賞に堪えられる、知的刺激に溢れた一冊。