とらえどころのない時間

芥川賞磯崎憲一郎さん、直木賞北村薫さんに決まる (www.asahi.com 2009年7月15日20時38分)
 
 第141回芥川賞直木賞日本文学振興会主催)の選考会が15日、東京・築地の新喜楽で開かれ、芥川賞磯崎憲一郎さん(44)の「終の住処」(新潮6月号)、直木賞北村薫さん(59)の「鷺と雪」(文芸春秋)が選ばれた。副賞は各100万円。授賞式は8月21日午後6時から、東京・丸の内の東京会館で開かれる。
 
 磯崎さんは千葉県生まれ。早稲田大卒。07年、「肝心の子供」で文芸賞を受け、作家デビュー。三井物産に勤務しながら小説を執筆、08年「眼と太陽」が芥川賞候補に。著書に「世紀の発見」など。東京都世田谷区在住。
 受賞作は、ともに30歳を過ぎてなりゆきで結婚した感のある夫婦の上に流れた20年という時間を描いた。娘も生まれ家も建てたが、常に不機嫌な妻は夫にとり不可解な存在であり続け、夫も浮気を繰り返す。細やかな描写が、相愛の情を欠きながら長い時間を共有したのちに得た、夫婦の関係を浮き彫りにする。
 
 磯崎さんは「小説だけがとらえどころのない時間というものを表現できると信じて書いてきた。その試みが認められ本当にうれしい。受賞は書く場が広がることを意味する。小説、芸術という大きな肯定的な力に奉仕する存在でありたい」と喜びを語った。
(後略)