松岡正剛 『空海の夢』

明恵上人『夢記』 高雄山寺
 
空海ほどエラン・ヴィタル(生命の飛躍)を日本において主唱した思想家はいなかった。『理趣経』はエラン・ヴィタルの宝庫であった。そしてまたそれゆえに空海は死の哲学にも長けていた。(…)けれども、そのような生死の哲学の背景にはひとり人間の存在のみが想定されるべきではない(…)「生命の海」は生物全体の生命の海でもなければなかったのである。 (p.17)