知に歴史あり

戦後日本の知の歩みたどる 岩波・中公・講談社の新書90点 (www.asahi.com 2012年2月15日14時36分)
 
 岩波新書中公新書講談社現代新書がタッグを組んだ。「知に歴史あり」と銘打ったフェアで、老舗3新書が「これぞ」という30点をそれぞれ選んでいる。フェアは今月から来月にかけて、全国約500書店で開かれる。
 
 岩波は1938年、中公は62年、講談社は64年に創刊され、「御三家」と言われてきた。いずれも時代性を映しながら教養の基礎となるようなテーマを扱ってきた。岩波の小田野耕明編集長は「時々のホットな問題を脂ののった書き手に書いてもらう新書は、時代を反映し、時代の証言者でもある」と話す。
 
 フェアには、発行から10年以上、10刷以上、10万部以上のいずれかに該当する中から選ばれた新書が並ぶ(書店によっては10点ずつ)。多くが発売以来、毎年重版しているようなロングセラーだ。
 
 240万部を超す永六輔著『大往生』(94年)も含まれる。この本は発売後まもなくミリオンセラーになり、新書戦争に火を付けたとも言われる。
 
 ベストセラーを狙い90年代半ばに大手出版社が次々参入、いまや新書は50以上のシリーズがある。以前なら単行本になった学術的なものから軟らかい実用書まで内容は幅広い。毎月計100点以上が発行され、平積みなど目立つ場所に置かれる期間が短く、話題になった本しかスポットをあびない状況だ。読者層も70年代ごろは大学生が中心だったが、今では60代以上という。
 
 読者の知的好奇心を満たすため、専門家がわかりやすく説きあかし、データではなくそれ自体が読み物としての作品であるということも新書の基本だ。小田野編集長は「新書は学問や知に敬意を払う日本の大衆文化の産物だ。フェアの90点には、戦後日本の知の歩みが表れている」と話している。