谷崎と荷風

谷崎潤一郎、「細雪」の批評を懇請 荷風への手紙で (www.asahi.com 2011年12月18日16時10分)
 
 小説家の谷崎潤一郎(1886〜1965)が、長編小説「細雪」の批評を頼む手紙を、師と仰ぐ永井荷風(1879〜1959)に送っていたことが分かった。愛知県一宮市文人書簡の収集家(85)が持っていた。起死回生の大作に文壇大御所のお墨付きをもらおうとした文豪の心境と、昭和の文壇を代表する師弟関係の一端がうかがえる未公開史料だ。
 
 「細雪」は戦時中、大阪の旧家4姉妹の暮らしを描いた華美な内容が時局に適さないとして雑誌連載を中止させられたが、谷崎は執筆をやめなかった。手紙の日付は1947年9月1日。戦後、ようやく上巻と中巻が中央公論社から出版され、下巻を「婦人公論」に連載していた時期にあたる。
 
 手紙は毛筆の候文で約50行。「強度の神経衰弱になられたとのうわさがあるが事実とは思えない」自分は春から酒も食事も節制を余儀なくされ意気地なく暮らしている、などの近況報告に続いて批評文を頼んでいる。