アクマデモ国体ヲ護持シ

終戦の日「力足らず、死に値す」 火野葦平のメモ発見 (www.asahi.com 2011年8月2日16時44分)
 
 「麦と兵隊」などで知られる作家の火野葦平が、終戦日とその前後に手帳に記したメモが見つかった。敗戦を悲しみ、自らを責める様子が伝わる。前日に報道統制に関する記述も残り、葦平の戦争観を知る貴重な資料になりそうだ。
 
 葦平は日中戦争従軍中に「糞尿譚」で芥川賞を受賞。国民的作家となった。戦後は戦争協力者として公職追放になっている。メモは、遺族から遺品の寄託を受けた北九州市立文学館が確認した。
 
 終戦日、葦平は苦しい胸の内をつづる。「この数日のこと、筆とる心にもならず。(略)歯噛みて唇をやぶるといへども、胸ぬちの怒りと悲しみとは去らず。ああ、力足らず、誠足らずして、(略)罪、死に値す。(十五日)」
 
 葦平は当時、福岡市の西部軍管区報道部に勤務。敗戦直前まで、報道統制の記述が残っていた。前日14日のメモに「記事指導要項」(案)とし、「アクマデモ国体ヲ護持シ」「共産主義的社会革命的言論ハ徹底的ニ取締ル」とあった。
 
 文学館の中西由紀子・主任学芸員は「敗戦への憤怒と国への至誠が足りなかった自責の念が伝わる」と話す。