インターネット時代の叛乱

エジプト、事実上の無政府状態 軍が治安維持にあたらず (www.asahi.com 2011年1月30日1時18分)
 
 ムバラク大統領の辞任を求めてエジプト全土に広がっている民衆デモは29日、政府の外出禁止令を無視する形で継続、首都カイロでは略奪が起きるなど、事実上無政府状態に陥った。カイロ中心部などには、軍兵士が戦車などとともに多数配置されているが、治安維持には当たっていない。
 
 ムバラク氏は同日夕(日本時間30日未明)、副大統領に側近で軍出身のオマル・スレイマン情報長官を充てると発表した。1981年の大統領就任以来、ムバラク氏が副大統領職を置くのは初めて。9月の大統領選に向けた事実上の後継指名といえる。新内閣の首相には、アハメド・シャフィク前民間航空相を指名した。
 カイロ・タハリール広場での抗議デモの参加者の一部からは、スレイマン氏の人事を歓迎する歓声が上がった。一方、ムバラク氏側近による後継を望まず、大統領の即時辞任を求める意見もあり、デモが沈静化するかはなお不透明だ。
 
 AFP通信によると、民主化指導者のエルバラダイ国際原子力機関IAEA)事務局長は同日、「抗議はムバラク氏が退陣するまで続くだろう」と述べた。エジプト出身の宗教指導者でスンニ派に大きな影響力を持つカラダウィ師も同日、ムバラク氏の即時辞任を求めた。
 デモは5日目の29日、政府の外出禁止令が午後4時から午前8時に拡大された後も続き、タハリール広場には5万人以上が集まり大統領の辞任を要求。中東の衛星テレビ、アルジャジーラによると、29日までにカイロ、アレクサンドリアスエズなどで少なくとも計120人が死亡、1千人を超す負傷者が出た。
 
 29日午後現在、カイロ中心部やアレクサンドリアなどでは、これまでデモの規制に当たっていた制服警察官の姿がほとんど見られなくなった。デモ隊との衝突回避のため、一部地域から警官が撤収したとの見方も出ている。治安の空白化に伴って、商店の略奪や放火、強盗なども相次ぎ、都市部では混乱状態が広がっている。交通整理の警官もほとんど見られない。
 軍は政府関係施設などの警備に当たっているものの、犯罪抑止やデモの制圧には、ほとんど関与していない模様だ。
 
 28日早朝から途絶えていたインターネット、携帯電話網のうち、携帯は29日午前、徐々に接続を再開した。インターネットが再開されれば、フェイスブックなどを通じた呼びかけでデモの勢いがさらに増すことも予想される。
 世界的な観光地として人気があるカイロ中心部のエジプト考古学博物館と、近郊ギザの3大ピラミッド地区は29日、閉鎖された。