収監者と忠誠心

北朝鮮政治犯収容所に20万人 韓国政府が調査 (www.asahi.com 2010年1月20日19時31分)
 
 韓国の政府機関・国家人権委員会は20日、北朝鮮政治犯収容所に推定20万人が収監されているとする調査結果を発表した。脱北者のうち政治犯として収監された経験者や収容所の警備員などをした17人に加え、2006年以降に他国から強制送還されながら再び脱北に成功した32人の証言内容を分析し、結論づけた。
 同委員会は、初の実態調査としている。収監者たちに職責をつけて、収監者に収監者を統制させている実態も明らかになったと指摘。調査結果を英文に訳して配布し、国連人権理事会をはじめ国際社会にも訴えていく方針だ。
 
 調査は昨年4月から年末まで実施された。それによると、政治犯収容所は1950年代後半から設置され、一時は13カ所にまで増えたが、80年代末以降は統廃合が進み、現在は6カ所に約20万人が収監されているとみられる。北朝鮮の人口は約2300万人。国民の1%に迫る人々が「政治犯」として収容されていることになる。
 
 政治犯収容所は、反体制の言動や脱北行為をとがめられた人々を収監対象としているが、韓国の歌を歌ったり、海外のラジオ放送を聞いたりしただけで摘発された、との証言もある。家族に連座制が適用されるともいわれている。今回の実態調査に応じた脱北者らの多くが、なぜ自分が収監されたのかわからないと話しているという。
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 また、収容所内では収監者らの労働力を最大限活用して忠誠心を高めるため、小隊長、中隊長、班長などの肩書が与えられ、収監者が収監者に拷問するケースもあることが判明した。処罰の程度は脱北の動機によって異なるが、「06年以降は強制送還者らへの処罰が強化された」「わいろを渡すと処分が軽くなったり、釈放されたりもした」との証言を得たという。
 さらに、女性収監者に対する人権侵害も横行。性的暴行のほか、金銭を隠していないか確認するため、全裸で調査を受けているという。
 
 同委員会は、北朝鮮が国連加盟国でありながら、国際人権規範を履行していないことを批判している。