神の銀行

「神の銀行」、巨額の資金洗浄疑惑 伊当局が本格捜査へ (www.asahi.com 2009年11月26日15時5分)
 
 イタリア司法当局は、ローマ法王庁バチカン)の財政を握る宗教事業協会(IOR、通称バチカン銀行)がイタリアの民間銀行を通じて巨額の資金洗浄を行っていた疑いがあるとみて、本格的に捜査に乗り出すことを決めた。ANSA通信などが伝えた。
 
 「神の銀行」とも呼ばれるIORは、サンピエトロ広場近くにある伊最大手ユニクレジットの支店に口座を開設。少なくとも過去3年間で6千万ユーロ(約80億円)の不透明な資金の流れが確認されているという。
 検察関係者によると、口座の名義人の特定とともに、誰が口座を実質的に管理していたかなどを中心に捜査するとともに、ユニクレジット側に資料の提出を求めている。今後、バチカンにも捜査協力を要請する方針という。ただ、IORの実態はベールに包まれているうえ、市国は独立国家だけに、全容解明は困難との見方が強い。
 
 イタリアでは82年、アンブロシアーノ銀行(当時)による13億ドルの不正融資が発覚。IORが不正に関与していた疑いが浮上し、銀行倒産後には頭取が変死するなど、戦後最大の金融スキャンダルとなった。伊司法当局はIOR総裁の逮捕状を取ったが、バチカンは引き渡しを拒否。頭取に対する殺人罪などに問われたマフィア幹部らも無罪判決となった。

 ――汝の兄弟より利息を取べからず即ち金の利息食物の利息など凡て利息を生ずべき物の利息を取るべからず 他國の人よりは汝利息を取も宜し惟汝の兄弟よりは利息を取べからず然ば汝が往て獲ところの地において汝の藭エホバ凡て汝が手に為ところの事に福祥をくだしたまふべし (申命記第23章19-20)
 
 旧約聖書において、利息を取る行為は厳しく禁じられていた。ユダヤ人が金貸し業に従事していたのは、「他國の人(異教徒)よりは汝利息を取も宜し」という断り書きに従ったまでのことだ。新訳には有名な「タラント」(タレントの原語)の挿話、「悪しく、かつ惰れる僕、わが播かぬ処より刈り、散らさぬ処より歛むることを知るか。さらば我が銀を銀行にあづけ置くべかりしなり、我きたりて利子とともに我が物をうけ取りしものを」(マタイ伝第25章26-27)が収められているが、「蓄財」行為が神の栄光にかなうものとして積極的に肯定されるようになったのはカルヴィニズム(予定説)の影響によるものであり、それが今日に至る資本主義の発展を準備したというマックス・ヴェーバーの指摘はあまりにも有名である。
 
 それだけに、「神の銀行」によるmoney launderingのニュースは衝撃的だ。launderはラテン語にその起源を持つ歴史的な用語のようではあるが、この暗い闇に光が当てられる日は来るのか?