甦えるソルジェニーツィン

かつて露で出版禁止の「収容所群島」、学校の必読書に (www.asahi.com 2009年9月10日11時18分)
 
 ロシアの教育科学省は9日、ノーベル文学賞作家の故ソルジェニーツィン氏の代表作「収容所群島」を、学校の必読書にすると発表した。インタファクス通信などが伝えた。
 
 この作品は、スターリン批判で収容所に送られた自らの体験を元にその実情をつづったもので、旧ソ連では出版が許されず、73年にパリで刊行。ソルジェニーツィン氏は翌年に逮捕され、市民権を剥奪(はくだつ)されて国外追放された。
 旧ソ連崩壊後の94年に帰国し、晩年はソ連崩壊後の混乱をある程度修復したとしてプーチン前大統領(現首相)を評価。07年には文学上の功績で国家賞を贈られ、昨年8月に89歳で死去した。
 今回の決定には、プーチン首相の意向が働いているという。妻のナタリヤさんは「本質的な、象徴的な出来事」と喜んでいる。
 
 教育科学省は作品だけでなく、ソルジェニーツィン氏の生い立ちも歴史の授業で学習させる計画という。だが、歴史の教科書の中にはスターリンを肯定的に説明しているものもあり、今後、教育現場でスターリンがどのように扱われるかが注目される。
 
 スターリンは冷酷な粛清を断行した独裁者として知られるが、ロシアでは第2次世界大戦でナチス・ドイツの侵攻に打ち勝った「強い国家」の象徴でもある。昨年実施されたロシアの偉人の人気投票でも上位に食い込んでいる。