「神の子」を見よ

カースト最底辺から首相をねらう「女帝」 インド総選挙 (www.asahi.com 2009年5月11日8時15分)
 
 「インド4千年の歴史で初めてダリット(被差別民)の支配者が誕生するのか」。ある有力紙はこんな見出しで特集を組んだ。16日に開票されるインド総選挙で大衆社会党(BSP)のマヤワティ党首(53)が注目されている。選挙後の連立協議でもかぎを握りそうだ。

 「まるでピラミッドかタージマハルだ。学校や病院を建てた方がましな気はする」。炎天下で作業する石工の親方が言った。
 インド最大の人口を抱えるウッタルプラデシュ州の州都ラクノウで大がかりな工事が進む。高さ30メートルほどの石造りの丘を中心に、60頭の象のモニュメントや石柱が林立。2年後の完成を目指す。州首相のマヤワティ氏が都市開発予算の6割をつぎ込んだという。
 その名は「アンベードカル博士社会変革公園」。博士はマヤワティ氏と同じくカースト社会で最底辺のダリットながら、初代法相として憲法を起草した人物だ。公園はダリットの巡礼地と化し、訪問者は1日約600人。親子で訪れた小作農の女性(45)は「私は誇りを感じる。マヤワティはすごい」と感激する。
 
 建国の父ガンジーは、当時「不可触民」と呼ばれたダリットを敬愛の念を込めて「ハリジャン(神の子)」と名付け、差別根絶を目指した。しかしカーストはなくならず、「ハリジャン」は逆に差別用語として定着した。
 ニューデリー郊外のスラムで育ったマヤワティ氏が頭角を現したのは小学校教師だった77年。差別問題の集会で閣僚が「ハリジャン」を連発したのに対し、マヤワティ氏が激しく批判、注目された。
 その後、ダリット解放運動の指導者カンシ・ラムに師事してBSPを設立、89年総選挙で初当選。人口規模が大きい底辺層の支持を背景に95年同州首相となり、断続的に3期務めた。07年の州議会選ではBSPが過半数を獲得、現在4期目だ。
 独裁的な振る舞いで「女帝」と恐れられる一面もある。予告なく州政府機関を訪ね、責任者が無断で休んでいたり、対応に不手際があったりすると即刻更迭。汚職は身内でも容赦なく訴追。巨大事業に批判がある一方、「政府が機能するようになった」とも評価される。
 
 総選挙は、中央で連立与党を率いる国民会議派と野党インド人民党の2大政党を軸に争われている。新聞各紙は、BSPが現有議席からほぼ倍増の30議席前後を取ると予想。定数545の1割に満たないが、2大政党が過半数を取れない情勢では、BSPがどちらにつくかで首相が決まる可能性がある。2大政党以外の小政党が結集して政権をつくろうとの動きもあり、その場合マヤワティ氏は最有力の首相候補だ。
 4月末、全国遊説から州都に戻ったマヤワティ氏は約5千人を前に演説した。「独立から60年余り、ダリットの暮らしは向上しない。政権を取ろう。どんなに暑くても、どんなに大事な用事があっても、必ず投票に行きなさい」
 聴衆は一斉に答えた。「州政権の次はニューデリーだ」「我らが姉(マヤワティ)よ進め。我らはあなたとともに」
 

グプタ朝(チャンドラグプタ1世)
仏教からの「輪廻」の思想
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マヌ法典
民族叙事詩ラーマーヤナ』『マハーバーラタ