適菜収 『日本をダメにしたB層の研究』

 社会に対して深い憎しみを抱いていたルソーの妄想(一般意志)を政治の世界に持ち込んだのがロベスピエールでした。(…)アレントは「世界を火のなかに投じたのはフランス革命だった」と言います。そして、一般意志が全体主義につながる仕組みについて簡潔に説明します。(…)
 要するに、権力の一元化が地獄を生み出すという話です。フランス革命は文明社会と人類の歴史に対する決起だった。

(略)
 人類の知の歴史、およびまともな哲学者、思想家、政治学者が明らかにしてきたことは、民主主義の本質は反知性主義であり、民意を利用する政治家を除去しない限り、文明社会は崩壊するという事実です。
 だからこそ、民主主義はアナーキズムと同様、狂気のイデオロギーとして分類されてきたのです。

(略)
 民主主義はキリスト教カルトです。その根底にある平等主義は、絶対存在である《神》を想定しないと出てこない発想です。このキリスト教を近代イデオロギーに組み込んだのがルソーだとニーチェは言います。 (p.183-7)
 
 現代を席巻する「B層社会」に対する著者の憎悪が漲っているが、主張している要点は明快。ゲーテを繙き、ニーチェを噛みしめ、アレントを分析すべし――。